迫 勝則「前田の美学」(宝島社)
日本のプロ野球界で、
これほど孤高にして凛たる野球人生があっただろうか。
両足のアキレス腱を手術しながら、
なお理想の打撃を追い求め続けたカープの前田智徳。
彼がついに2000本安打を達成した。
いまその感動をあなたに……。
日本のプロ野球界で、
これほど孤高にして凛たる野球人生があっただろうか。
両足のアキレス腱を手術しながら、
なお理想の打撃を追い求め続けたカープの前田智徳。
彼がついに2000本安打を達成した。
いまその感動をあなたに……。
Amazaonの書評やmixiのレビューにも多くの方が書かれているように、
この本は「前田智徳」入門書的内容です。
なので、カープファンで前田選手のことを良く知っている人にとっては、既知のことばかりで物足りないかもしれません。
前に読んだ、小松成美「中田英寿 誇り」(幻冬舎)同様に、著者の信者的思い入れの強さを感じますしね。
本人にほとんど取材らしき取材をしていないのもorz
それでも、前田選手のことを良く知らない自分のような他球団ファンの人が、彼のことを知るにはいい本だとは思います。
自分は、前田選手のことを「職人・サムライ気質」の「孤高の天才」位の認識しかないので、この本によって、前田選手のことを詳しく知った次第であります。
たとえば、
・イチローは、前田の打撃スタイルを理想としていたため、背番号51は入団当初の背番号にならった。
・その前田は掛布雅之(元阪神)を目指し、イチローがオリックスに入団した年に背番号31に変えた。
・前田がイチローに初対面のときに言った言葉
「お前、内野安打ばかりじゃ面白くなかろう」
(イチローはともかく塁に出る、前田は形を追求する)
・前田は結婚してから、丸くなった。
(独身時代は審判の判定に不服で調子を崩していたのがなくなった)
・落合監督いわく「日本のプロ野球界でお手本にしていいのはカープの前田のみ。王やイチローの真似をしてはいけない」
・2000本安打は、本人いわく「(1995年5月23日アキレス腱を切る負傷をした)神宮で達成したい」
とかね。
・自分的に突っ込む点
その壱:
黒田さんのことを「男の中の男」といってるが、メジャーに行った今どう思っているのか?新井さんのことは?
その弐:
著者はFAで去った金本さんや江藤さんのことには、ほとんど触れられてないのですが、どう思っているのだろうか?それと、衣笠さんや北別府さんや大野さんのこともほとんどスルーなのは?
その参:
津田恒美:悲壮感漂うピッチング
>著者は言ってないけど、この系譜は藤川球児に受け継がれてるんじゃあ。
その肆:
2007年オールスターファン投票:セ・リーグ外野手1位
第1戦は自分も見に行ってました。
この本にも書かれてますが、自分が見た限りでもこの日は巨大卵のライトスタンドのセ・リーグファンにも一体感がありましたね。
巨人ファンも阪神ファンも関係なく。。。
特に、代打前田登場のあたりは。
2004年頃からですかね。オールスターでセ・リーグも一体化するようになったのは。
1999年の甲子園はひどかった。阪神ファンは巨人の選手が出ても応援しないし、ヤジるだけ。その逆も。。まあ、由伸もダレてましたからね
その伍:
ブラウン監督の「ベース投げ」、計算ずくで「美しい退場」って、これもパフォーマンスの一種なのに、新庄やマリーンズの選手が試合後に歌うパファオーマンスには、批判的。
「プレーで勝負して欲しい」という言い分はわかるが、ブラウン監督の「ベース投げ」は良くて、こっちがいかんというのはあまりにも一方的過ぎないか?
その他、自分的には特に突っ込みどころのない内容のピックアップ<順不同>
1.巧打者の系譜〜左に多い
川上哲治、張本勲、若松、篠塚、立浪、イチロー、青木(ヤ)
それに加えて、前田がアキレス腱切ったときに療養法の師事を仰いだ(酒を患部に塗るとか)谷沢や田尾、福留も追加
2.同じ年に2000本安打を達成した松井秀喜、田中幸雄の件
3.去年の交流戦、(前田選手は)球筋が読めない。成瀬とか有銘、木下(公)、大隣(ソ)などが苦手だった
4.カープ清貧の美学論
川口和久:広島というのは雑草から花を咲かせるようなチーム
5.1986年日本シリーズ第8戦:山本浩二ラスト試合
偉大なスポーツ選手の引退はその選手一個人だけの問題ではない。
その選手が活躍した時代に生きた人の心の問題なのだ。
それがゆえ、引退のシーンは美しい。
6.カープファンと阪神ファンの比較
阪神ファンは自分が中心でその回りに阪神がある。
カープファンはカープが中心で、その回りを自分が回っている
7.美しい試合
2006年高校野球決勝戦(早実−駒大苫小牧:引き分けの方)
逃げたら負け
1969年(三沢−松山商)延長18回再試合
8.広島商野球:一球にかける
スリーバントスクイズなど1点を取りに行く野球。
対極的なのが池田(徳島)野球
9.甲子園の土お持ち帰り、熊本工の川上哲治が最初
熊本工は、まだ1回も甲子園で優勝していない
その歴史は前田の野球人生とシンクロ
10.前田ファンとは、
「プロの高い技術をこよなく愛する男性」
「男性に強い個性を求める女性」
11.山本一義・求道者の名コーチ
打者が打席に入る前の耳打ちが利く。
金本にはきいた、前田は聞いてないふりをして聞いていた。
12.江夏の21球の裏舞台。
MVP賞品のリボンが江夏登板でルーチェにかけられ、9回無死満塁でクラウン、石渡のスクイズ失敗でルーチェに
13.2000本安打の達成は広島市民球場。
まるで、この日でなくてはいけないかのように5打席目が回ってきた。→当ブログ関連エントリー
迫 勝則「前田の美学」(宝島社)
+ + 目 次 + +
プロローグ
第一章 日本で最も美しい打者
第二章 悪夢。そしてどん底から這い上がる
第三章 前田は誤解されている
第四章 道を究める─勝負師
第五章 巧打者の系譜
第六章 ついにそのシーズンがやってきた
第七章 長い道のり
第八章 広島が赤く染まった日
第九章 サムライを育むチーム
第十章 なぜブラウン監督はベースを投げたのか
第十一章 原点の甲子園
第十二章 前田流の生き方
エピローグ
前田智徳・年度別打撃成績
あとがき
迫 勝則(さこ・かつのり)
1946年広島市生まれ。山口大経済学部卒。
2001年マツダ(株)退社後、作家活動に入る。
現在、広島国際学院大学現代社会学部長(教授)。
著書に『さらば、愛しきマツダ』(文藝春秋)、『ビジネスマン 明日への12章』(祥伝社)、『広島にカープはいらないのか』(南々社)などがある。
これらの本も合わせた書評を探す→人気ブログランキング野球部門